ファイヤークイズ午後の部
《いいペースですね! 次の回答者は川野佐和さんです!》


名前を呼ばれると、どうしてもビクリと体が震えてしまう。


モニター越しに見ていた時もそうだった。


次の回答者が呼ばれる度に、ビクビクしてしまった。


《さっそく大切なものを見て見ましょう!》


アナウンスがそう言い、ステージ上にテーブルが上がって来る。


テーブルの上に無造作に乗せられたそれを見た瞬間、「あ……」と、小さく呟いていた。


クリーム色の手袋が、白いテーブルの上で寂しそうにうつむいている様子が見えた。


うつむいた手袋はそのまま祖母の姿をだぶる。


祖母の、手作りの手袋だった。


これが燃えてしまうなんて絶対に嫌だった。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで、背筋を伸ばす。
< 15 / 71 >

この作品をシェア

pagetop