【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!

1 聖女による巣ごもり生活のススメ

「すぅー。すぅー」

 石造りの修道院では、春の訪れを祝う祭のためにシスター達がひっきりなしに手を動かしていた。

 高い尖塔をいだく聖堂は天井が高く、煤を払うのも一苦労だ。
 ていねいに拭かれていく木のベンチは、とうの昔にニスがはげて艶がない。
 磨かれる窓には、まだガラスの製造がたくみでなかった時代の厚みがまだらなガラスがはまっている。

 男手があれば清掃も少しは楽かもしれない。
 だが、ここには女性しかいない。男性をこばむことで何百年も遠い昔から清く正しい場所として守られてきたのだ。

「すぅー。すぅー」

 その修道院の、美しいステンドグラスがはまった聖堂の奥。野花が咲く原っぱを見渡せる回廊をわたった先に、シスターのための祈りの部屋が三つある。

 その右端の扉に「起こさないで!」と書かれた札が下がっていた。
 先ほどから聞こえている寝息はこの部屋からあがっている。

 扉をあけると、本来なら拝礼用の石像があるだろう壁のくぼみに、こんもりと盛り上がった毛玉――いや、毛布包みがあった。
 布の間から銀髪をはみ出させて、幸せそうに眠っているのは一人の少女だ。

「ルルーティカ王女、そろそろお昼ですよ」
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