【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 城塞を飛び越える騎士は、門を守っている聖騎士と敬礼をかわした。聖王城を避けるように下町を走り抜けて、カントの外れにある大きな屋敷に下りる。

「着きましたよ、ルルーティカ様」
「着きましたよって……。どこなの、ここは?」
「私の屋敷です」

 騎士は、ルルを毛布ごと抱きかかえて屋敷に向かう。ルルは、もう抵抗する気力もなくされるがままである。
 魔力で開けた扉をくぐり、絨毯が敷かれたホールを通って、大きな階段を上る。屋敷はかなり広いのに使用人の気配はない。

 無言で進む騎士は、二階の大部屋のおくにある主寝室に入ったところで、ルルをベッドの上に下ろした。
 下ろされた拍子に毛布の絡みがとけて、ルルは仰向けに倒れる。銀色の髪を散らばらせ、白いネグリジェドレスで横たわる体に、騎士は覆い被さってくる。

「ルルーティカ様……」

 嫌な予感がした。少しでも騎士から離れようと、もぞもぞ並行移動すると、騎士に手をついて止められる。

「ひっ!」

 悲鳴はなんとか飲みこんだが、だらだら流れる冷や汗は止まらない。

 まずい。暇を持てあまして何度も読み返したロマンス小説にこういうシーンがあった。恋する男女がまぐわうあれだ。
 ルルは、ちまたでは一応、清らかな聖女で通っているのに。

(穢《けが》されるーーー!)

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