【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 騎乗していたときは大人びて見えたが、あどけなさの残る顔立ちからするに、ルルとそう年は離れていないだろう。17か18才くらいかもしれない。
 表に裏に返される金貨の光沢が、重たそうな二重がかぶさる深紅の瞳に映りこんでいる。

「そんなに興味があるならあげるわよ。国中どこにでもあるものだけど」

 その金貨は、聖教国フィロソフィーの通貨だ。一枚で100ギニーに値する。他には、50ギニーと10ギニーの二種類ある銀貨と、1ギニーの銅貨もある。
 ルルは、管理していた貨幣をどれもきれいに磨いていた。修道院では、持てるものを大切に扱うことが鉄則だったのだ。

「そのかわり教えて。なぜ私を修道院から連れ出したの?」

 起き上がったルルが問いかけると、騎士はその場に跪《ひざまず》いた。

「私の一存です。ルルーティカ様、聖王イシュタッド陛下が失踪されました」
「お兄様が?」

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