【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 戻ってこいと叫ぶイシュタッドを無視して、キルケゴールは大空にはばたいた。
 窮屈な城から離れて、庭を飛び越えて、街が砂粒になりそうなほど高度を上げていく。冷たい風に頬をさらしながら、ルルはやってしまったと後悔した。

「お兄様の言いつけを破ってしまったわ……」
「たまには自由にされてもよろしいのでは。あれはもう聖王ではなく、ルルーティカ様最愛騎士団の騎士ですし、それに――」

 ノアは、腕を伸ばしてルルの頬に触れ、後ろを振り向かせた。
 たなびく銀髪と同じ色の睫毛に彩られた瞳に、落ちていく太陽の光と、ノアの姿だけが映っている。空には鳥一羽とて飛んでいない。

「――貴方のすべては私のものですから」

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