【コミカライズ】黒騎士様から全力で溺愛されていますが、すごもり聖女は今日も引きこもりたい!
 ルルは鏡の自分とにらめっこした。
 薄く透けるベールも、ほんのりと赤い頬も、首と耳につけた宝石も、どこをとっても完璧なのに、『王女殿下』を気取るには何かが足りない。

(観衆が『さすがルルーティカ王女!!』ってなるような迫力を出したいのよね)

 はったりでもいい。
 たとえ、ルルの素が巣ごもり大好きで、日がな一日まどろんでいるのが何より幸せなものぐさだとしても、人前に出ている間だけそれっぽく見えれば十分だ。

 ルルが眉間にしわを寄せて鏡を見ているので、ノアは「見づらいなら照明を点けます」と手の平をドレッサーに置かれたランプに向けた。
 ノアの持つ魔力によって、花びらの形をしたランプには温かな光が宿る。

「キルケシュタイン家は王族ではないのに、どうしてノアには魔力があるの?」
「博士は王侯貴族の非嫡出子《ひちゃくしゅつし》だったんです」

 非嫡出子というのは、婚姻していない両親から生まれた子どものことだ。
 やんごとなき家柄では珍しくない。政略結婚で好きでもない相手と結婚しなければならなくて、恋人や愛人を家のそとに持つ人がいるためだ。

 正式に結婚していない相手との子どもには家を継がせることができないが、流れる血は王侯貴族のものなので、多かれ少なかれ魔力を持っているのが普通だ。

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