君がくれた青空
バケツをひっくり返したような水が
髪から滴っていた。
柵に足をかけて座る。
このまま前に倒れたら、消えられる。
楽になれる。楽になりたい。
そう思って身体を倒そうとした時。
「まじ、で、何やってんの、お前…」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
走って来たのか息が切れている。
それは小さな頃から聴きなれた声。
幼馴染みの翔だった。
「えへ、これ降りたら私楽になれる
のかもしれないなぁって思ってさ。」
「バカなこと言ってんじゃねーよ」
そういうと、彼は私の方に駆け寄って来て
私を柵から引きづり下ろした。
「ねぇ、翔、消えたいの。もう疲れたの。」
「誰がお前をなんて言ってもこれからは
そばにいてやるから二度とこんな事すんな」
でも翔が助けたことによって私への
嫌がらせはもっと過激になった。
翔はうちの学年でも割と有名人。
野球がうまくてカッコよくて。
もちろんそんな彼は先輩からも同学年からも
人気があった。
私と翔一緒にいることが気に食わない
人なんて山ほどいるのだから。
ある時は階段から落とされ。
ある時は体育館に閉じ込められ。
ある時はバケツで水をかけられた。
それでも彼は約束通り、私のそばにいた。
だから強くなれた。
私を信じてくれる人もできた。
同じクラスになった親友2人は
私の味方でいてくれた。
そう。そうして私は自分の居場所を
作ってもらっていた。
親友、梨菜と紗希。
翔の仲のいい男子2人。
6人でいることが多くなった。
私は居場所を見つけた。
微かな希望、雲間から見える青空。
私はその青空に手を伸ばして
願った。
“いつまでもこの幸せが続きますように“