私がまだ好きなこと、君は知らない
◆
中学2年生のとき。
私は同じ部活の同級生を好きになった。
彼は私より少しだけ背が高くて、長めの黒髪がよく似合っていた。
彼は1年生のときはあまり部活に来なくて、話したことがなかった。
でも、2年生からは毎日顔を出すようになって、夏休みの部活で私たちの距離は一気に縮まった。
彼とはいろいろなことを話した。
特に覚えているのは、憧れの恋愛シチュエーションだ。
お互いの憧れが一致していなかったから、忘れられない。
彼と話すときは、ほかの男子と違ってなんだか楽しかった。
きっと、このときから彼のことを特別に思っていたんだと思う。
恋かもしれないと自覚したのは、夏も終わるころだった。
女子と話すことが苦手だという彼が、私以外の女子と話しているところを見かけた。
私がよく知る、柔らかい笑顔を向けていた。
胸が痛くなったことを、今でも覚えている。
それでも告白する勇気なんてなくて、ずっと友達として過ごしていた。
そして月日は流れ、2学期がもうすぐ終わるというある日、彼から告白された。
「付き合って」
部活終わり、廊下を2人で歩いているときのことだった。
耳元で囁くように言われ、私は驚いて頷くことしかできなかった。
それからダブルデートをして、これから冬休みというとき、私は彼から手紙を受け取った。
『別れるんじゃなくて、友達に戻るだけ。多分君には僕は似合わないと思う』
混乱した。
何が書いてあるのか、すぐには理解できなかった。
少しずつ落ち着いて、もう恋人関係ではなくなったということだけがわかった。
2週間しか経っていなかったけど、彼なりに考えて出した答えなのだろうと、受け止めることにした。
そして私は、彼の“友達に戻る”という言葉を信じた。
また前みたいに話せる。
そう思っていた。
だけど、そんなことはなかった。
彼が部活に来なくなって、一切話せなくなったのだ。
< 1 / 3 >