禁忌は解禁される

｢この、ガキ！言わせておけば━━━━
うう……｣
殴りかかってきた拳を片手でかわす、颯天。
その拳を握り潰すように、握った。

｢気安く…俺に触るな…おっさん。
お前レベルが、俺に触れると思うな……
俺はもっと上を見てんだ。
この程度で目くじらたてんじゃねぇよ……｣
ギッと睨み付けた。

その冷たい目に、一瞬でひれ伏した男。

｢まぁ…そうゆうことだから！考えておいて？
あ、言っとくけど、辞めるなら今の内だから。
このままこの組にいるってなら、一生俺の為に働け！
おっさん(笑)！｣
後ろ手に手を振り、去っていく颯天だった。

颯天が去っていった事務所。
｢おい、今の目……｣
｢あぁ…あの時の組長の目だな……｣
｢地獄の雨の日の……｣
雷が鳴り響く、雨の日。
律子が亡くなった、あの日の颯太の目に━━━━━━

｢ついて行くしかねぇな……若に｣
｢あぁ、敵に回してはいけない人種だな｣

組員達だけではない、町野や百田も思っていた。
やはりこの方は……

血が繋がっていなくとも“神龍寺 颯太”の息子だと。

車に乗り込んだ、颯天。
｢とりあえず、これだけ回っときゃいいよな？｣
｢はい、後はどうにでもなります｣
｢さすがに疲れたぁ……。
あ、姉ちゃんに電話しよっと！｣
先程までの冷たい目とは正反対の、子どもの無邪気さを出した颯天がスマホを取り出した。

一颯にかけるが、出ない。
｢ねぇ…今、姉ちゃん何やってんの？｣
｢おそらく見合いかと……井田に確認してみます｣
｢あー俺がかける。井田が出たら、スマホ貸して？｣
｢はい｣