禁忌は解禁される
「おかえり」
そう言うと、一颯を抱き締めた。

「よかった…ちゃんと帰ってきた」
「ごめんなさい…お父さん」
「あぁ」
一颯を離すと、
「二人とも、話がある。
このまま部屋に来い」
と言って、中に入った。


颯太の部屋に入り、颯太の前に座る二人。
「俺は、朝帰りを怒ってんじゃねぇよ!
二人とも、もう大人だし。
ただ、問題なのは町野達を控えさせなかったことだ。
颯天が帰らせたらしいな。
颯天、もうお前は俺の次に偉いんだ。
お前に、帰れと言われたら奴等は帰るしかねぇんだよ!
その立場を考えろ!お前のその身体には組員全員の命を背負ってんだよ!」
「姉ちゃん一人くらい、守れるし……」

「颯天!」
「なんだよ!?」
「あの時……」
「………」
「あの時のようになっても、お前は一颯を守れるのか?」
「……それは…」

「あの時って、何?さっき…銀くんも言ってた!」
「律子が亡くなった時だ…」
「え……?」
「あの日のことは、この組の最大の“痛み”だ。
守れなかった。一番守るべき人を……。
一颯、俺がお前を離せないのは、あの時のことがあるからなんだ。そうじゃなければ、とうにこの家から出してあげれたはずなんだ。
言ったよな?お前等は、俺の宝物だと。
お前等を亡くしたら、今度こそ俺は壊れてしまう」

一颯は初めて、颯太の想いを知る。

「お父さん……ごめんなさい…!
私…それなのに早く出たいなんて…嫌いだなんて……」
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