オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
彼もまた書棚に背中を付けた。
二人で書棚に並んだ形で佇んだ。

「俺と染中さんは昔一度会ってる…もしかしたら、染中さんは憶えていないかもしれないけど」

「憶えています…私…貴方からお金とコートそれに傘を借りました」

「何だ…憶えていたのか…あの後、風邪引かなかった?」

「えっ?あ…はい…大丈夫でした」

「それなら良かった」

彼は安心した穏やかな表情を浮かべる。

「あ、あの…昨日はご馳走様でした…」

「いいよ…それよりも・・・これ」

彼は上着のポケットから私が落とした社章バッジを取り出し、そっとベストの襟元に付けてくれた。

「俺がバッジを拾わなかったら、ずっと騙してたのか?」

「え、あ…すいません…だってこの会社は社内恋愛禁止だし」

「…社内恋愛禁止とか言って…栗原と付き合ってるクセに」

彼は再び、私の目の前に立ち、ブラックパールに瞳で恨めしそうに見つめた。

「あれは…嘘で…」

「どれだけ嘘は重ねるんだよ…」

彼の左手が頬にかかった。

悪戯げに彼の指先が後れ毛に触れる。
背筋に迫りあがる痺れるような感覚に戸惑う。

「目瞑って…」

私は素直に彼の言葉に従い、目を閉じた。

「君は俺だけの華だ…」

そう耳許で囁き、唇を奪う。

開いた唇の隙間をこじ開けて、舌を差し入れて来た。
自分に嘘を付いた私に罰を与えるような荒っぽいキス。

彼の舌が私の口内を全部蹂躙していく。

カラダの芯は火がともったように熱くなっていった。

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