オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
「美苑さん、驚かず訊いてくれ。実は俺と君は…」
濱部社長はとてもいい辛いのか語尾を濁してしまった。

「早い話。彼は君のお兄さんだ…」

「じゃ私の父親は濱部さん??」

「…違う…俺の本当の父親は外務事務次官を務める樋口真一だ」

――――樋口真一。


母にも教えてもらえなかった父の名前を初めて訊いた。

「俺は『星凛堂』の社長に就く前、父の妹夫婦である濱部家の養子になったんだ…」

「じゃ元は樋口さんだってんですか?」

「まぁな」

「まさか、ラブホの部屋で兄と妹が対面するとは…可笑しすぎでしょ?」

「お、お前が入ったんだろ!!栗原」
「さっきまで、酔って気分悪かったクセに…」

「!?」

濱部社長はまたトイレに行ってしまった。

「本当に気分悪いようだな…まぁ、このまま朝まで泊まっちゃう?」

「えっ!?あ…それは…」

「生き別れた兄と妹の再会だ。積もる話もあるだろ?」

「そりゃ話したいけど…話せる状態では…」

私はトイレの方に目を遣った。

「じゃ俺は…シャワーでも浴びて来るよ」

「えっ?」

栗原さんはバスルームに消えてしまった。
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