オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
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社屋から出て足を止めて、どんよりとした空を見上げる。
今にも雨が降るかもしれない空模様。
「傘…忘れた…」
頬を撫でる冷たい風は湿っぽい。
郵便局は直ぐそこだ。大丈夫。
私は郵便局に急いだ。
横断歩道を渡り、林立するビルの間にある小さな郵便局。
直接、局内に入って、局員の人に手渡した。
「えっ!?」
外に出た途端大粒の雨が降って来た。
私はコートのフードを被り、走っていく。
運悪く赤信号に捕まり、雨の中、青信号を待って居た。
祐早斗さんからプレゼントで貰った高価なカシミアのコートが雨に濡れる。何だか申し訳ない。
青信号になったのを確かめ、慌てて駆け出すと横断歩道にトラックが突っ込んで来た。
「危ない!!」
トラックから聞こえるブレーキ音。
誰かが私の元に来て、咄嗟に庇ってくれた。
雨の降る空に舞い上がるビニール傘。
「!!?」
二人で横断歩道に蹲った。
トラックとの接触は間一髪で免れる。
「栗原さん?」
「大丈夫か?…全く…」
栗原さんも立ち上がった。
彼は私の手を掴んで、横断歩道を渡り切った。
「ちゃんと回りを見ないと…ダメだろ?染中さん」
ビニール傘は壊れ、横断歩道のど真ん中に放り出されていた。
私を庇った拍子に彼の眼鏡が吹っ飛んでしまったようだ。
さっきの信号無視して突っ込んで来たトラックはそのまま逃げるように走り去ってしまった。
「逃げたな…まぁいい…こっちだ」
栗原さんに腕を掴まれ、慌てて近くのカフェテリアに雨宿りした。