オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
「ゴメンなさい…」

彼は右手と左目の端に傷を負っていた。

「大丈夫?」

「君は?」

「私は大丈夫です…」

二人で温かいコーヒーを啜った。
「社長には外出すると言って来た…三十分は大丈夫だ…」

「どうして私を追って、出て来たんですか?」

「君が傘を忘れたからだ・・・」

彼は持っていたもう一本のビニール傘を渡した。

「申し訳ありません…」

「まさか…青信号でトラックが突っ込んで来るなんて…驚いたよ。でも、良かった…俺が居なかったら、染中さん、轢かれていたかもしれないぞ…今度は気を付けてね」

「はい…本当にありがとう御座います…栗原さん」

「・・・」

カフェテリアはクリスマスカラーの飾りで彩られていた。

「クリスマスはどうするの?染中さん」

「え、あ…祐早斗さんとクルージング船に乗ってフレンチのフルコースを食べます」

「それは良いね…」

栗原さんは冷やかすような光を瞳に湛え、コーヒーを口に含む。

「一つ言っていい?」

「はい…」


「君の眼鏡もないよ…」

「えっ!!?」

私は硝子に映る自分の顔を覗き込んだ。

「確かにありません…」

「どうするの?」

「どうしましょうか…」

「予備はあるの?」

「はい、家に…」

「そうなら…帰った方がいいね…後で、俺が君の荷物持って来てあげるから…此処で待ってるといい」

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