オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
「コトの全貌を知った社長。その時…会長は既に病に臥していた。
常務に問いただしたが…彼は白を切り、俺のでっち上げだと言い切った。
俺の運命を変えておいて…腸が煮えくりかえる思いでしたよ・・・」

「栗原…」

彼は腕を組み、硝子の向こうの降り続ける雨を見つめる。

「社長は俺に頭を下げて頼みました。不問に付してくれと。シンガポールに居る息子の為にも会社を潰すワケにはいかないと。訊けば、社長と亡くなられた奥様は社内恋愛禁止のこの会社で知り合った仲だと。それでも、二人は恋に落ちて…社長が生まれた。
それを許さなかった亡き会長は社長を北海道の富良野工場に左遷。
若い時は苦労したと訊きました。奥様は社長が七歳の時に死亡。
死んだ妻の為にも息子を社長にしたい、それが会長の一番の望み・・・そんな風に子を想う親の心。
俺の親は生まれたての俺をコインロッカーに押し込めた。
俺を想ってくれる親は居ない。貴方が本当に羨ましいですよ。社長」

―――俺も死んだ母の為に社長の椅子に座り、祖父を見返すと心に誓って、今まで頑張って来た。
羨ましそうに俺を見つめる栗原。

・・・彼は意外と情に脆い男なのかもしれない。



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