【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
「北斗くん、私のおうちの車で送っても良かったのに……」
 聖羅は残念、という顔でそう言っていた。
 そして北斗は「そこまで甘えられないよ」と言っていた。
 北斗がそれを断ったのは美波にとって嬉しいことであったけれど、理由は多分ほかにもあった。
 聖羅に送られたら、北斗が住んでいるのが自宅ではなく、美波の家だとバレてしまうから。
 そんなことは頼めるはずがないだろう。
「ごめんね、お話し中だった……?」
 美波は近付きながら、言った。
 北斗は「いや」と言って、その子たちを示してくれる。
「向坂が応援に来てくれたんだ。前に会った、よな」
 聖羅をまず示した。一番親しい様子だったからだろう。
「あ、うん。どうも……お、お久し、ぶり……です」
 美波はなんとあいさつしたものか、少し迷ってしまってどもってしまったのだけど、とにかくあいさつした。
 聖羅は美波のほうをじっと見てきた。
 ロングのマーメイドスカートにカーディガンという大人っぽいかわいい服に、今日も綺麗に髪を巻いていた。
 そしてどうも、その視線はあのときと同じ。
 あまり良いものでなかったように、美波には感じられてしまったのだった。
「ええ、お久しぶり」
 一応、あいさつはしてくれた。
 でも美波はそれを良いようには思えなかった。
 聖羅はこんな、陸上大会になんて縁がないだろう。今日の服装などを見ても、どう見てもそうだ。
 それならやっぱり、『気になるひとの応援に来た』のではないだろうか。
 そして、それなら今、話をしていた北斗が目当てだったと考えるのが、自然なのでは……。
 そこまで考えて、美波はぞくりとした。
 聖羅は、もしかして、北斗のことを……。
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