【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
「じゃ、行くか。美波」
北斗はそれであいさつも終わったと思ったのだろう。
「向坂、またな」と言いかけたのだけど、そこに聖羅が不意に動いた。
北斗の腕に触れて、体を寄せる。
美波は目を丸くしてしまった。
まるで抱きつくようなものだったのだから。
「北斗くん、今度の撮影でよろしくね」
だが言ったのはそれだけだった。
そんなこと、抱きついて言うことではないだろう、と思った。
美波の心臓が、どく、どくっと高鳴る。
もちろん、嫌な鳴り方でだ。
「ああ……、じゃ」
一瞬。
北斗が顔をしかめたように、美波には見えた。
その顔は本当に一瞬で、笑顔に変わってしまったけれど。
そして自然な様子で、そっと聖羅の腕をはがして、こちらへやってきた。
「行くか」
もう一度行ってくれて、今度こそ帰ることになった。
美波も聖羅たちに視線をやって、小さくお礼をした。
だがやはり、帰ってきた視線はあまり好意的なものではなかった。きっと。
「はー……」
ロビーを出て、ガーッと音を立てて、自動ドアが開く。
そこも出てから、北斗はため息をついた。
「悪いな、なんか、偶然同じ学校のやつを見に来たとかで会って……」
北斗はそう言ったけれど、美波はあまり良くないことを思ってしまう。
すなわち、『それは嘘だろう』というもの。
だって、あれほど北斗にべったりしていて、おまけにあれほどおしゃれをしてきていたのだ。
北斗目当てでないはずがあるだろうか?
「そう、なんだ」
でもそんなことは口にできない。美波はそれだけ言った。
北斗に傘を渡して、北斗は「さんきゅ」とそれを受け取って、開いて、さして、雨の中に踏み出した。
美波も自分のピンク色の傘を開いて、さして、それを追った。
「えっとね、あっちだよ、車」
「ああ。白い車だよな」
会話はもう普通のものに戻っていた。お母さんの車に向かって歩く。
雨の中、なんだか心も冷たいように感じてしまって、美波はちょっと、ぶるっとした。
聖羅のあの視線が冷たかったことも手伝って。
北斗はそれであいさつも終わったと思ったのだろう。
「向坂、またな」と言いかけたのだけど、そこに聖羅が不意に動いた。
北斗の腕に触れて、体を寄せる。
美波は目を丸くしてしまった。
まるで抱きつくようなものだったのだから。
「北斗くん、今度の撮影でよろしくね」
だが言ったのはそれだけだった。
そんなこと、抱きついて言うことではないだろう、と思った。
美波の心臓が、どく、どくっと高鳴る。
もちろん、嫌な鳴り方でだ。
「ああ……、じゃ」
一瞬。
北斗が顔をしかめたように、美波には見えた。
その顔は本当に一瞬で、笑顔に変わってしまったけれど。
そして自然な様子で、そっと聖羅の腕をはがして、こちらへやってきた。
「行くか」
もう一度行ってくれて、今度こそ帰ることになった。
美波も聖羅たちに視線をやって、小さくお礼をした。
だがやはり、帰ってきた視線はあまり好意的なものではなかった。きっと。
「はー……」
ロビーを出て、ガーッと音を立てて、自動ドアが開く。
そこも出てから、北斗はため息をついた。
「悪いな、なんか、偶然同じ学校のやつを見に来たとかで会って……」
北斗はそう言ったけれど、美波はあまり良くないことを思ってしまう。
すなわち、『それは嘘だろう』というもの。
だって、あれほど北斗にべったりしていて、おまけにあれほどおしゃれをしてきていたのだ。
北斗目当てでないはずがあるだろうか?
「そう、なんだ」
でもそんなことは口にできない。美波はそれだけ言った。
北斗に傘を渡して、北斗は「さんきゅ」とそれを受け取って、開いて、さして、雨の中に踏み出した。
美波も自分のピンク色の傘を開いて、さして、それを追った。
「えっとね、あっちだよ、車」
「ああ。白い車だよな」
会話はもう普通のものに戻っていた。お母さんの車に向かって歩く。
雨の中、なんだか心も冷たいように感じてしまって、美波はちょっと、ぶるっとした。
聖羅のあの視線が冷たかったことも手伝って。