【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 美波の心臓はバクバクして、はち切れそうだ。
 今、撮られているのだ。後ろ姿とはいえ、自分のことを。
 おまけにこれは来月の雑誌に載ってしまう。
 綺麗に見えるかな、と心配でならない。
「はい、オッケーです! じゃ、次、北斗くんとのショットでーす」
 言われて、どきんっと違う意味で心臓が高鳴った。
 北斗との写真。
 さっきは美波にピントが合っていて、遠くに北斗が立っているというシチュエーションだったけれど、今度は近くで撮られてしまうのである。
 北斗が近付いてきた。美波の前で、にこっと笑ってくれる。
「じゃ、よろしく」
「う、うん!」
 その笑顔は家で見るものではなかった。
 学校で見るものでもなかった。
 やはりこれも、モデルの今角 北斗なのだ。
 今、目の前にいるのは北斗であって、別の人物。
 先程と同じように、美波のポーズを戸成さんが指導してくれた。
 美波はその通りにして、決まったポーズができたところで、その前に北斗が立った。
 北斗は流石、自然な様子でぴしっと定位置らしきところに立って、ひとつも直されなかった。
 すごい、やっぱりプロなんだ。
 美波は当たり前のことを感動してしまった。
「じゃ、北斗くん」
 戸成さんが言うと同時、北斗はすっと手を持ち上げた。
 美波の頬に添えるようにする。
 顔は離れていたけれど、手はしっかり触れられた。
 かぁっと顔が熱くなる。さっきの比ではなく、ばくばくと心臓が高鳴りはじめた。
 今度のものは撮影に対する緊張ではない。
 北斗と向かい合って、手で触れられて、おまけに見つめられてしまっていることにである。
 少し前のことを思い出した。
 そう、このモデルの『彼女役』を頼まれたときのこと。
 あのときのように、頬を包まれている。
 同じように、見つめられている。
 優しい目……。
 そこで、美波は、はっとした。
 今の北斗の目。
 さっきと、違う。
 美波にはわかってしまう。
 これはこの間、見つめられたのとまったく同じ目だ。視線だ。
 とても優しくて……、それ以上に。
 美波だけに向けてくれる視線、なのだ。
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