【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 言われたのはまったく違うことだった。
 美波は思わず顔をあげていた。北斗のほうを見る。
 その拍子に、目に溜まっていた涙が、ぽろぽろっと頬に流れた。
 北斗が手を持ち上げた。
 どうするかと思えば、指でそっとその涙を拭ってくれた。それで笑みを浮かべてくれる。
 その笑みの意味。
 やはり美波を勇気づけてくれようとするもの、だった。
「モデルデビューした頃のことかな。デビューしたはいいものの、なんか……恥ずかしくてさ。雑誌に載ってるとか。だから、モデルになったことは話したんだけど、どの雑誌に載ってるとか、言わなかったんだ。それで、友達を怒らせちまった」
 美波はただ、それを聞いた。
 確かに今日、起こったことに少し似ている。
 北斗にもそんなことがあったなんて、思いもしなかった。
 カッコ良くて、モデルの仕事もうまくこなしているプロで、イケメンモデルとして人気で。
 そんな北斗も、『恥ずかしい』と思っていた頃があったなんて。
 目を丸くしていただろう美波に、ふっと笑ってみせてくれて、北斗は続けた。
「『なんで隠すんだ。お前が頑張ってることだろ、それを恥だと思ってるのかよ』って怒らせてさ。そいつ、中学で離れちまったけど、今でもあの言葉、俺の中に強く残ってる」
 北斗はどこか、懐かしそうな顔になった。
 モデルデビューしたのが小学五年生だというから、もう五年くらいは前のことなのだろう。だいぶ前のことだ。
 事情は少し……、いや、だいぶ違う。
 でも確かに同じ部分もあるのだ。
 『親友に話すべきことを話さなかったこと』。
 それがきっと、そのときの北斗と、そして今の美波のしてしまった、同じあやまちなのだろう。
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