【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
「お前がなかなか言えなかったのはわかる。俺だって、お前をトラブルに巻き込みたくなかったから、できるだけ他人からわからないようにしようとしたんだ。でもそれは良くなかったのかもな」
 話は現在のところへ戻ってきた。美波はそれには首を振る。
「……ううん。北斗は気づかってくれたん、だから」
「そうか……?」
 北斗は小さく首をかしげて言った。どこか困ったような顔になる。
「美波だって、悪気があって隠したわけじゃないだろ。あずみちゃんが、嫌な気持ちになるかもしれないと思ったから、言わなかったんだろ」
「……うん。でも……」
 美波は言いかけたけれど、それはさえぎられた。
「それは多分、あずみちゃんもわかってると思う。気づかいのすれ違いだから……なかなか難しい、よな」
 つまり、それだ。
 すれ違い。
 相手のことを考えたゆえの、すれ違い。
 それから、多分、『好き』の気持ちの違いもあったのだろう。
 あずみが北斗のファンである『好き』。
 美波が幼なじみとして北斗を思う『好き』。
 そのふたつは違うものなのだから。
 あれ、でも、『幼なじみ』……。
 そこで美波の頭に浮かんだこと。
 美波の心にちょっと引っかかった。
 北斗は幼なじみ。
 友達。
 先輩。
 それから、今は家族。
 だから『好き』に決まっている。
 でも、北斗に触れられるとドキドキする。
 あの写真を撮られたとき、北斗の手に頬を包まれてとてもドキドキしてしまったし、見つめられて、視線が離せなかった。
 その『好き』というのは、まるで……。
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