元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
遠い祝福
◇◇◇
その頃、ティアリーゼは懐かしの地に降り立っていた。
何時間か振りに地面を踏みしめ、後ろを振り返る。
「ここまで運んでくれてどうもありがとう」
「いいえ、お気になさらず!」
笑顔で答えたのはカラスの亜人。
どうやら鳥の亜人にとって素顔を晒すのは恥らしく、くちばしのついた面をかぶっている。そのせいで表情は見えないが、よく喋り、よく笑う賑やかな男だった。
「帰りはこの笛を鳴らせばいいのよね?」