元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「殺したいと言ったら、おとなしく殺されてくれるの?」

 なめらかな肌に指が食い込む。

 うなじの方まで指を滑らせると、微かにざらりとした感触があった。

 なめらかでいて、指先に人の肌にはない凹凸を感じる。

「……もしかして、ここに鱗があるの?」

「いかにも」

 シュクルは抵抗しなかった。

 ティアリーゼをじっと見つめ、されるがままになっている。

 飼い主を信用しきった愛玩動物と同じ目だった。

 そんな瞳に見つめられ、ティアリーゼはふっと指を離す。

「本当に私があなたを殺すつもりだったらどうするのよ。もうちょっと抵抗しなさい」

「お前が望むのなら殺されてやってもいい」

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