元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
秘密と、恋人

***



 夜、ティアリーゼはシュクルに連れられて外へ出た。

 向かったのは城の裏手にある小高い山。そう険しい道ではないが、さすがに夜中ともなれば視界が悪い。

 さっさとひとりで歩いて行ってしまうシュクルをなんとか追いかけると、やがて少し開けた場所に出た。

 木々に囲まれるようにして存在する、ぽっかりと空いた空間。

 明らかに人の手が加わったものだろうと思われるそこには、巨大な石碑がひとつ。

 そこに近付いて、ティアリーゼは足を止めた。

(これ……ただの石碑じゃない。……墓標だわ)

 同じく墓標の前に立ったシュクルがティアリーゼを見下ろす。

< 163 / 484 >

この作品をシェア

pagetop