元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……私は生まれ落ちたときから不完全だった。柔らかい鱗と陽の光に弱い身体を持ち、兄や父たちと同じようには過ごせなかった。だから、存在しないものとして扱われた。次代の魔王となる可能性どころか、満足に成体となれる可能性さえ低かったから」

「……それなのにあなたはここにいて、ご家族はいないのね」

「兄たちが強い個体だったからだ」

 答えにはなっていない。が、シュクルの中では繋がっているのだろう。

 ティアリーゼがいまいち理解できていないことに気付いたらしく、自分から補足を入れてくる。

「兄たちは強かった。父は嫉妬した」

「……喧嘩でもしたの?」

< 166 / 484 >

この作品をシェア

pagetop