元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「先に言っておくけど、私はあなたがいてくれてよかったと思っているわ」

 返事の代わりに尻尾が跳ねる。

 ゆるりとティアリーゼに近付いたかと思うと、すり寄って甘え始めた。

 肝心のシュクル本人はなんの感情も顔に浮かべていない。

「ふたりは夫婦喧嘩をした。そして、お互いに命を落とした」

(この『喧嘩』はきっと私が思う意味ではない方の、よね。……兄弟どころか、お母様までお父様に殺されるなんて)

「私は存在しないものだから食らわれなかった。だから残った。まともに血を継ぐ力がなくとも」

「……それが、人間としか子供を作れないってことの真相?」

「いかにも」

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