元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 答えたシュクルの表情に変化はない。

「ひどいことを聞いているんだとしたらごめんなさい。あんまり会話が得意じゃないのって、もしかして……」

「そもそもその経験が少ないからだと思う。私が表へ出たのは最近のことだから」

「そう……」

 地下にいた、という言葉の真意を深めるつもりはなかった。

 子供のシュクルが自ら望んで表に出てこなかったとはとても思えない。恐らくは家族の誰かから、あるいは周りの人間にそうするよう言われたのだ。

 端的な言葉ながらも懸命に伝えようとするシュクルの真実を、ティアリーゼは頭の中でうまくまとめる。

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