元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(人間としか子供を作れないのは、亜人として不完全に生まれてしまったから。……弱い、とは思えないけれど)

「そういえばあなた、前に自分を雛だって言っていたわね」

「正確には私の知る友人の言葉だが」

「……どうしてそう言ったのか、わかる気がするわ」

 ティアリーゼは手を伸ばしてシュクルを抱き締める。

 長身はあっさり腕の中に収まった。

「本当に子供だったのね。人とまともに話さないまま、四百年生きてきたなんて」

「今は成体だ」

「……心の話をしているのよ」

(だからこの人は触れられただけで懐いてきたんだわ。……誰もそんなふうにしてくれなかったから)

「……お前は私に触れる」

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