元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「あなたのことは嫌いじゃないの。抱き締めてあげたいって思うし、喜ばせてあげたいって思う。でも、それだけじゃ子供は作れないのよ」

「知っている。子を為すためになにをするべきかは本能が教えてくれる」

「……そういう意味で言ってるんじゃなくて」

 シュクルがシュクルであるおかげで、どんどん冷静になれている。

 まだ顔の火照りも胸の高鳴りも治まっていないが、とりあえず顔を見て話をできる程度には落ち着いた。

 一応、深呼吸だけしておく。

 そんなティアリーゼの側で白い尻尾がぱたぱたと揺れた。

「人間は誰かと一緒になりたいと思ったら、まず恋人同士になるものなの」

「なんのために?」

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