元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……その方が幸せだからだと思うわ」

「わからない。恋人はなにをする?」

「私にもいたことがないからわからないけれど、一緒にご飯を食べたりするんじゃないかしら?」

「難しくはないが、なんの意味がある?」

「一緒にご飯を食べたくないなって思う相手かどうか、子供を作る前にわかるわ」

「いてくれればそれでいい」

「……あなたはそういう人だったわね」

 手を伸ばし、嬉しそうに揺れる尻尾を優しく撫でる。

「まずは恋人から始めたいわ。私もあなたが好きだもの」

「構わない」

(……あ)

 初めてシュクルが笑みを浮かべる。

 ぎこちないながらも、温かくて穏やかな笑みだった。

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