元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 魔王たるシュクルの添い寝に付き合うような相手はいない。となると、恋人という扱いになったティアリーゼがその役目を務めるのは当然のことだった。

 そして悔しいことに、ティアリーゼはそうやって求められることを喜んでしまう。

(……ずっと勇者としてばかり求められてきた。でも、シュクルは違う。何者でもない私の側にいたいと言ってくれる……)

 少しだけシュクルの胸に顔を寄せてみる。

 ほう、とティアリーゼが息を吐いたそのときだった。

「っ! ど、どこ触ってるの」

「柔らかい」

「だ、だめだってば……!」

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