元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 赤銅色の艶やかな髪と、最高級の翡翠を溶かしたような美しい翠の瞳。匂い立つような美しさは、十八という年齢を経て、ようやく幼さを消しつつある。柔らかな頬と穏やかな笑みを浮かべる唇は、彼女を見た男が皆、口付けたいと欲してもおかしくない魅力をはらんでいた。それでいて、一国の姫らしからぬ意思の強い光を瞳に湛えている。

 そんなティアリーゼに向かって、大陸について質問を発したレレンが頷いた。彼はティアリーゼが幼い頃からの教育係である。

「さすがティアリーゼ様。我が国の姫君として、そして勇者としてふさわしい教養を身に着けておいでのようです」

「……だったらいいんだけど」

< 3 / 484 >

この作品をシェア

pagetop