元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「だがな、ティアリーゼ。私はお前も、お前の母も愛していたのだよ」

「……お父様」

「身分の違いから分かれることになってしまったが……本当に愛していた。でなければ、お前が産まれることもなかったからな」

 独り言のように言うと、王はティアリーゼに向かって手を差し出した。

 側へ来るよう促されているのだと気付き、すぐに近付く。

「お前が生きていてくれて本当によかった。また、タルツのために尽くしてくれるな」

(……え)

「それは……もちろんです、が……」

 ティアリーゼのした話と、今の言葉とが噛み合わない。それを指摘する前に、頭の上へと手を乗せられた。

「っ……」

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