元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ――撫でられている。エドワードがしてくれたように。

 あのときは兄に妹として扱われて嬉しい気持ちがあった。今も娘として認められたようで嬉しく思う。

 だが、なにかが違うと感じてしまった。きっとエドワードがしてくれたあのときも感じるべきだったもの。

(シュクルの方が、もっと優しく触れてくれるわ……)

 触り方の話ではない。シュクルは心からの愛情を込めてティアリーゼに触れてくるが、その思いを今は感じなかった。

 形式的にそうするべきだからするだけ。それがとても悲しい。

(……愛し合えるだけの時間を育んでこられなかったのかもしれないわね)

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