元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 代わりにティアリーゼは言いたいことをすべて言った。

 自分の身でできること。それをまたひとつこなせたことにほっとして、気まずい空気には気付かない振りをした。



***



 夜、ティアリーゼは久し振りにひとりぼっちだった。

 シュクルのいないベッドはやけに広く、寒い。

(いつの間にかシュクルがいることに慣れていたのね……)

 抱き締めたくてもここにあのかわいらしいトカゲはいない。ちょっぴり冷たい肌に触れられないのは、意外なほど寂しかった。

 何度も寝返りを打ち、横になったまま丸くなると、自分の身体を抱き締めながら目を閉じる。

(早くあの人のもとに帰りたい)

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