元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 寂しさからか、そんな気持ちが芽生える。

 しゅうしゅうという鳴き声も聞こえず、ご機嫌に振られる尻尾を見られない今は、自分のあるべき生活だと思えなかった。

 次に会うときは結婚式。

 人間と亜人とが共存できることを知らしめるためのための――政略結婚。

 だが、ティアリーゼは幸せだと感じている。おそらくはシュクルもそうだろう。

 たとえ理由を持った結婚だとしても、その理由と同じくらいお互いへの強い思いがある。撫でられて喜ぶシュクルを、いつまでもいつまでも撫でていたい。ティアリーゼもまた、獣らしいシュクルのキスをこれからもずっとされていたい。

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