元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 その抗議を聞き入れるはずがなく、キッカはへらっと笑う。

「お前さ、あいつが来てから……なんつーの、妙に人間に近くなったよ」

「わからない。それのなにが悪い?」

「いや、ほら……好きとかなんとか、そういうのって必要か? シュシュにとってあいつは卵を温めるゆりかごだろ? だったら死なない程度に飯食わせて、適当に巣に閉じ込めときゃいいだけじゃん」

 ティアリーゼが聞けば、「そういうところが人間と違う」と思ったことだろう。

 シュクルには今のキッカの言葉の意味が理解できた。そして、実際に自分たちはそういう生き物だということもわかっていた。

 だが、首を横に振る。

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