元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。

 空を見上げていたシュクルがキッカを見下ろす。

 その青い瞳と、キッカの仮面の奥にある瞳が確かに重なった。

「俺は絶対、お前みたいな恋なんかしねぇぞ」

「クゥクゥには無理だ。私の恋は、私だけのものだから」

 微かに笑ったシュクルが再び空へ目を向けた瞬間、強い風が吹き抜ける。

 どんな強風の中も自在に待ってきたキッカが、腕で顔を覆い、歯を食いしばった。

「シュシュ!」

 もう、シュクルはその呼びかけに答えない。

 抜けるような青空を翔ける姿は、トカゲなどというかわいらしいものではなく――。

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