元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 最初から人間などいなかったかのように、黒く焦げた炭の塊だけが残っている。

 絶句したティアリーゼの心情を知らぬはずがないのに、エドワードを焼き尽くしたシュクルは機嫌よさそうに喉を鳴らした。

「今が一番、気持ちいい」

「なんてことを……!」

「殺さないとは言わなかった」

「だからって、こんな――」

 くらりと視界が揺れ、最後まで言い切れずに荒い息をこぼす。衝撃が強すぎたのと、いい加減限界が来ていたのとで意識を保てなくなったのだろう。

(人間の常識が通じる相手じゃないって、知ってたはずなのに)

 それ以上、意識を保つのは厳しかった。

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