元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 シュクルは自身の背で恋人が倒れたのを察し、それまでの激しさが嘘のように静かに、そして慎重に飛び上がった。

 傷付いた翼をはためかせ、敢えて残しておいた兵に言う。

「白蜥の魔王の所業を末永く語り継ぐがいい。街を焼き、勇者を殺し――この国の姫を攫ったと」

 今度こそシュクルは大空を舞う。その姿はやがて遠ざかり、見えなくなっていった。

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