元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
溺愛の果て
***



 ティアリーゼが目を覚ましたのは、それから三日過ぎてからだった。更にそこから療養して早十日。

 動けない身体ではどこへ行くこともできず、おかげで考える時間がたくさんできた。あの殺戮や、兄を目の前で燃やされた衝撃も落ち着き始めていたが。

「い、いたた」

 胸元を毛布で隠しながら、背中の治療を受ける。

 本当ならメルチゥがやってくれるはずだったが、どうもティアリーゼの知らないところでシュクルがごねたらしく、魔王本人による手当てが行われていた。

 その手つきは非常に危なっかしく、傷のある場所に思い切り触れたり、強く押したりとなかなか容赦がない。

「動くな」

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