元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それは今までの自分の人生を否定すること。自分が信じてきた人々を疑うこと。

 しかし、教えられてきたことが偽りならば、仲間たちの言葉も、勇者が為すべきとされたことへの違和感も説明がつく。

「あなたは悪い人?」

 ティアリーゼの言葉は、ほかの誰かが聞けば間の抜けた質問だと笑っていた。

 貴重な例外となったシュクルは、青い瞳に不思議な光を湛えて、やはり尻尾を振る。

「わからない」

「あなた、そればっかりだわ」

「答えようのない質問ばかりされる」

 初めてシュクルが不満げに言った。眉を寄せ、ティアリーゼの反応を待っている。

「それは……まぁ、私が悪いのかもしれないけれど」

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