元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それがいいにせよ悪いにせよ、一石を投じられたことを喜んでいたい――。

 そのとき、こんこん、と扉を叩く音が聞こえた。ティアリーゼが入るよう促すと、ややあってからメルチゥが姿を見せる。

「おめでとうございます、ティアリーゼ様」

「ありがとう。……私、ちゃんと似合っているかしら?」

「もちろんです。人間って素敵なものを作るんですね」

 その言葉がティアリーゼの胸を打った。

「いつか、メルチゥも結婚するときは人間のドレスを着てみたらどう?」

「どこにお願いすればいいんでしょう? 私、せっかくなら結婚式もしてみたいです。人間のやり方で」

(メルチゥも変わったわね)

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