元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 人間の正装に近くはあるが、胸元に散りばめられた宝石らしき欠片の粒による装飾や、細かな意匠からは人ではない種族の文化が感じられた。

 もともと見栄えがいいのもあり、今のシュクルは非常に見目麗しく映る。

 不覚にもティアリーゼは夫となる恋人の姿にときめいた。

(こういう想いをこの人に抱くなんて、最初は思わなかったのに)

 異性としてのシュクルを意識すると、自然と鼓動が速くなる。

 見つめ合うふたりを見て自分が邪魔だと察したのか、メルチゥが静かに部屋を出た。

「もうすぐ時間なのに、なにをしに来たの?」

「お前を見に。皆が見るべきだと騒ぐものだから」

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