元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 指を絡めると、シュクルは自分の頬にティアリーゼの手を擦り付けて微笑んだ。

「指輪が必要らしい。なんの骨で作ればいい?」

「骨じゃなくて金属がいいわ……」

「覚えておこう。ほかに、石を嵌め込むと聞いた。好きなものは?」

「特に思いつかないわね。あんまり自分でもそういった装飾品は持っていなかったし」

「ならば、提案したい」

「え?」

 自発的にそう言ってくるのが珍しくて、ティアリーゼの目が丸くなる。

 シュクルはいずれ指輪をはめることになるであろう恋人の左手の薬指を撫でると、そこに自分の額を押し当てた。

「角のひとかけらを贈らせてくれ」

「嬉しい、けど……痛くない?」

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