元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「痛くない。そのうち生え変わる」

「……そういうものなの?」

「いかにも」

 まだシュクルについてはわからないことの方が多い。それもまた、ティアリーゼには幸せなことだった。

「あなたのこと、これからもっと教えてね」

「聞けばいい。私はここにいる」

「……こんなやり取り、前にもした気がする」

 ティアリーゼが笑うと、シュクルも笑った。その緩んだ頬に手を伸ばす。

「あなたの笑った顔、すごく好きだわ」

「わからない。お前を見ていると頬が柔らかくなる。たまに引きつって痛いのだが、どうすればいい?」

「表情筋を鍛えるところから始めなくちゃいけないわね」

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