元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 感情をずっと尾で伝えていたシュクルだが、表情が生まれるにつれ、その動きは落ち着いていった。

 少し寂しくは思うものの、これでいいと考える。

 これから共に生きていく中で、シュクルはもっと雛の自分を捨てていくのだろう。一番近い場所でそれを見られるのが嬉しかった。

「さ、そろそろ行きましょう。主役ふたりがいつまでも部屋に引きこもってるなんて、みんなに心配されちゃうわ」

「それは困る」

 手を取り合って扉を開く。

 新しい明日を前に、ふたりで足を踏み出した。


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