元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「逆に問うが、お前は『悪い人』か?」

 質問を受け、ティアリーゼは額に手を当てて天を仰いだ。

(魔王にそんなことを聞かれる日が来るとは思わなかったわ……)

 本当にわからないのはこの人自身だ、と頭痛を感じながら、言葉を選んで答える。

「もしかしたらあなたを殺すかもしれないし、悪い人かも。あなたの知っている歴史とは違う歴史を真実だと教えられてきたようだし、今もまだそれを本当だと思ってる――ううん、思いたい自分がいる。だとしたら、やっぱり勇者として魔王を殺すべきなんじゃないかって行動してもおかしくないでしょう?」

 ほとんどひと息に言うも、シュクルはこれまでと変わらず首を傾げた。

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