元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
エピローグ
***
「ちゃんと荷物は持った?」
「持った」
正式に夫婦となったシュクルとティアリーゼは、周りから押しに押されてちょっとした旅行をすることになっていた。
いわゆる蜜月旅行(ハネムーン)であり、ふたりきりで長い時間を過ごす初めての時間でもあった。
(今まで夜はふたりきりだったりしたけど、それが毎日朝から晩まで続くってどういう感じなのかしら……?)
「本当に徒歩で行くつもりですか?」
見送りに来たトトが呆れたように言う。
馬の亜人だというトトは、人型の足の遅さを嫌っているらしい。