元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ティアリーゼが口を挟むと、トトは諦めたように肩をすくめる。

「王でなければ判断を下せないものなど、在位中に一度あればいい方だ。それよりも、直接王が出向いて各地を見学していると広まった方が都合がいい」

「私はレセントになにがあるのかさえ、よくわからない。地図ならば頭に入れたのだが」

 ぺち、とシュクルの尻尾が地面を叩く。トトとの会話を真面目に聞いているようで、早く旅立ちたいと落ち着かなく思っている証拠だ。

「ともかく、お気を付けて。くれぐれも金鷹の魔王のように、ほかの大陸へは行かないよう」

「なぜ? 挨拶をするのも悪くないと思うが」

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