元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。

(……ん?)

 いい、と言う割には苦い顔をしている。表情から感情を読み取れるようになったのもいい傾向だった。

「あまり気が乗らない?」

「いかにも。クゥクゥはお前にくちばしをこすり付ける。あれは許されない」

「お友達の証みたいなものでしょう?」

「少なくとも、蜜月中に許すのはおもしろくない」

 きっぱり言い切ると、シュクルはティアリーゼを抱き寄せた。

 立ち止まり、自身の額をティアリーゼの額に押し当てる。人型のときは嵌め込まれた石にしか見えないそれが、彼女の肌をぐりぐりとえぐった。

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